●2005年9月23日 会津鉄道に譲渡された直後のキハ8500系。まだ中間車キハ8555が使用されていた頃。
2001年9月まで名鉄にも立派な気動車がいた事をご存知だろうか。それもレールバスではなく20m級の特急車両。
…そう、JR高山本線へ乗り入れて高山まで直通する「北アルプス号」用の車両、キハ8500系である。
高山本線で運用されていたJR東海のキハ85をベースとしながら、外観は側面窓デザインやアイボリーベースの車体など、名鉄らしさを取り入れた車両となった。
⚫︎2003年3月 ベージュを基調としたキハ8500の車内。座席はパノラマDXの中間車8850形と同じもの?。
列車自体の「北アルプス号」の歴史は古く、前身は戦前まで遡る。
かつては晩年の谷汲・揖斐線で活躍したモ755もお座敷改造ののちに汽車に引かれて下呂まで乗り入れていたと言うので、その歴史の古さに驚きである。
その後、国鉄キハ80形そっくりのキハ8000・8200系「たかやま号」を経て特急「北アルプス」に昇格。この頃は遠く富山地鉄の立山まで延伸していた事もあった。このキハ8500系は、8200系の後継として1991年にデビューした。
⚫︎2001年10月 北アルプス号引退後、新川検車区で佇むキハ8500系。(見学時に撮影)
しかし高速道路の延伸により高速バスがライバルに。
また名鉄に少数しかいない気動車維持の効率の悪さもあり、2001年9月に北アルプス号は残念ながら廃止となった。
⚫︎2001年10月 北アルプス号引退後、新川検車区で佇むキハ8500系。(見学時に撮影)
当時中学生だった私は一度だけ乗る機会があった。なけなしの小遣いで新名古屋から犬山までの切符を買い、この異色の名鉄特急に乗車。名鉄線内では聞きなれない車内チャイムや検印に心踊らせた記憶がある。
心惹かれたのも束の間、この乗車から数ヶ月後に北アルプス号は廃止。碌に写真にも残す機会はなく引退してしまった。
その後、車齢の若かったキハ8500系は遥か遠くの会津鉄道へ譲渡。「AIZUマウントエクスプレス」として運用されることが決まったが、そこでは愛称板の交換や転落防止幌が設置されたくらいで、名鉄時代のカラーリングは維持された。私のような名鉄ファンにはありがたいことだった。
⚫︎2008年1月14日 喜多方駅に進入するキハ8500系。2両編成なのが寂しい…
当初は運用についていたキハ8555も2007年には部品取りとなり解体、残る4両も2010年5月で会津鉄道から引退した。
現在は8501と8504が那智川清流鉄道に静態保存された。愛知での展示が決まっていた8502と8503は、東日本大震災の影響もあり会津若松の観光施設で展示されたのち、2015年にはマレーシアのサバ鉄道に譲渡。現在も運行されている。
⚫︎2014年12月31日 ベースとなったJR東海キハ85系も2023年7月で引退した。
新鵜沼の短絡線をゆっくりと渡る運用に、キハ85系との併結可能な性能。名鉄に在籍した気動車特急として特異な存在だったキハ8500系。
今もなお、名鉄ファンの心をを掻き立てられる車両であることは間違いない。